ちいさなチョーちゃんのおおきなたまご

2017年01月13日 16:24



ちいさな、ちいさな

しろキンカチョウのチョーちゃんは

「ペー」

となく

ラッパのような

カエルがふまれたような

つぶれたこえ

「ぺー」

いいたいことも、ぜんぶひとこえ


かいぬしのポンくんに

カゴからだしてもらいたいとき

グルグルとびまわって

「ぺー」

みずあびをしたいとき

みずをいれかえてと

「ぺー」

ポンくんが

「どこにいるの?」

ときけば

「ぺー」

「チョーちゃん」

と、やさしくわらえば

「ぺー」


でも

「キッ」

と、きにいらないものにはたいあたり

ほかのとりたちにとっしん

「キッ」

ほかのひとをつつく

「キッ」


だけど

ポンくんといれば

いつもおだやか

ポンくんからえさをもらい

ずっとポンくんのたいおんをかんじながら

おおきくなったチョーちゃん


あるひ

チョーちゃんがうずくまる

いつもとちがう

めをほそめ

うごかない

わたあめのようにふっくらと

しろいけはさかだって

すべてのひかりをはねかえし

きれいにひかっていても

ざぜんをしているように

みうごきひとつしない

「チョーちゃん、だいじょうぶ?」

いつもの「ペー」はきこえない


ブルブル

ちいさくふるえるからだ

なんどもくりかえして

ちからをふりしぼってたちあがる

おしりをきばり、こきざみにふるえると

おおきなかたまり

ゴロリところがる

しろくない、きいろいたまご

チョーちゃんは

いきあらく、におうだちで

ポンくんをにらむ

一〇〇メートルをぜんりょくではしったよう


「あー、チョーちゃん、たまご」

ポンくんのてのひら

チョーちゃんのマタのした

すこしなかがすけている

だえんけいのたま

チョーちゃんのあたまよりもおおきい

ポンくんのゆびさきくらいのたま

チョーちゃんにとっては

からだの五ぶんの一ほど

いきはまだはげしい


「よくやったね、えらかったね」

ポンくんはチョーちゃんをだきよせる

たまごはごろごろ

「はじめてチョーちゃんがうんだたまご」

はじめてのキンカチョウのたまご

ひかりにきみのかたちがすけてみえる

ちいさなとりのちいさなたまご

でも

チョーちゃんにとっては

あまりにおおきなたまご

ポンくんなら、ボーリングのたまよりもっとおおきい


ところがチョーちゃんは、もう

たまごのことは、しらんかお

ポンくんのみぎてをひとりじめ

ポンくんのひだりてはしろいたまご

なんどチョーちゃんのむねにもどしても

あしではしにのける


チョーちゃんひとりでうんだ

かえることのないたまご

それなのに

チョーちゃんはくりかえし、なんどもうむ

つづけざまにふたつみっつも

そのたびに

ハアハアとあらいいき

かえらないとしってか

あたためることなく

すぐにポンくんのてに

なんのためにうむのか

なんのためにうませるのか

かえることのないたまご


うみたての

ほんのりすけるだえんけい

ほんとうなら

なかにはいのちがあるはず

おつきさんのようにまるいかげは

なんだろう?

チョーちゃんがひっしになってうむ

たまはなんだろう?

ポンくんはチョーちゃんにきくことはない

まいかい

「えらいですね、チョーちゃんは」

といってあたまをなでる

ときには

くるしむチョーちゃんをだいたまま

あさまでそいねすることもある

チョーちゃんにげんきがなくなってくると

こころはほそくなり、まるでおちつかない


もしかしたら

「ぺー」としかいえない

チョーちゃんのたまごのなかには

かえることのない、だえんけいのなかには

ポンくんへのおもいがつまっているとしたら

ポンくんは

ありえないと、あきれるだろうか

うれしいと、なくだろうか

かなしいと、めをふせるだろうか


それとも

ただ、わらうだけだろうか


ポンくんのてのなか

チョーちゃんが「ペー」とないた


平成24年5月26日に家に来たチョーちゃんは

平成29年1月11日の午前12時半頃、ポン君の前日からの徹夜の看病も届かず

永眠に就きました。


最後にチョーちゃんがおしりから出した排泄物は、まるで、

固まらなかった卵のようでした。